借用書がない場合の借金の時効援用について
1 法律上は、借用書の有無と時効の成立は別問題
お金を借りた際に借用書(専門的には、金銭消費貸借契約書と呼ばれます)を作成していない場合でも、法律上は消滅時効が成立する可能性があります。
つまり、一定の期間が経過すれば、時効を援用することで返済義務がなくなる場合があります。
法的には、お金の貸し借りに関する契約は、必ずしも書面を作成しなければ成立しないものではありません。
借用書がなくても、口頭での約束やメール、メッセージアプリなどのやり取りによっても、理論上契約は成立し得ます。
そのため、借用書がない場合であっても、お金を借りて返す約束をしていれば借金が存在すること自体は否定されませんし、同様に消滅時効の制度も適用されます。
ただし、現実的には、借用書などの契約に関する書面がないと、返済期限などを確認することが難しくなる場合があります。
特に親族や知人から借りたお金の場合には、記録が残っていないことも多く、事実上消滅時効援用の可否について判断することが困難になるケースもあります。
以下、消滅時効がどのような仕組みで成立するのか、そして借用書がない場合に生じやすい実務上の問題について説明します。
2 借金の消滅時効が完成するまでの期間
個人間の借金など、貸金業者などの事業者ではない相手から借りたお金についても、一定期間が経過すると消滅時効が成立します。
ただし、借入れが行われた時期によって適用されるルールが異なる場合があります。
まず、令和2年3月31日以前に借りたお金(発生した債務)については、返済期限から10年が経過すると、基本的に消滅時効が完成します。
一方、令和2年4月1日以降に借りたお金については、民法改正により、返済期限から5年が経過すると消滅時効が完成する可能性があります。
また、債権者が権利を行使することができる時から10年間権利を行使しなかった場合にも、消滅時効が完成することになります。
実務上は、債権者が権利を行使できることを知った時と、権利を行使できる時が同じタイミングになることが多いため、返済期限などを基準として時効期間を判断するケースが一般的です。
このように、借用書がなくても、返済期限から一定期間が経過していれば、時効を援用することで返済義務が消滅する可能性があります。
3 借用書がない場合に生じる実務上の問題
法律上は借用書がなくても借金返済義務の消滅時効は成立しますが、実際にはいくつかの問題が生じることがあります。
代表的なものとして、時効の起算点を確認することが難しいという点が挙げられます。
消滅時効が成立しているかどうかを判断するためには、返済期限(貸した側において権利行使が可能となった日)を把握する必要があります。
しかし、借用書がない場合には、このような情報がはっきりしないことがあります。
特に口約束のみで借り入れが行われた場合には、後で第三者が認識可能な客観的証拠が残っていないため、消滅時効の成立を判断することが難しくなることもあります。
一方で、メールやメッセージアプリなどで返済期限についてやり取りしている場合や、一部の返済をした際の記録が残っている場合には、それらの内容をもとに時効の起算点を推測できることもあります。
そのため、借用書を作成していない場合でも、借入れの条件や返済に関するやり取りはメールなどの形で残しておくことが望ましいといえます。
また、消滅時効の成立の可能性がある場合には、自己判断で対応するのではなく、専門家に相談しながら進めることも重要です。
























